FXでは資産を減らさないことが大切です。
資産を減らさないためには、取引で負ける回数を減らすだけでなく、大きな損失を出さないようにすることが求められます。
ここでは、初心者の人たちに参考にしていただけるような、致命傷を追わず、こつこつと取引を続けながら、経験を積む資金計画についてご紹介しましょう。
【動画で解説】
1回の取引で大きな損失を出してはいけない
ざっくり言うと、将来の価格は、現在の価格から上昇するか、下落するかの二択です。
初心者の人たちの中には、「今回は損失を出しても、次回で利益が出れば問題ない」と考える人がいるかもしれません。
しかし、一度損失を出してしまうと、それを取り戻すのは簡単ではありません。
例えば、100万円で取引を開始して、10%の損失を出し、資金が90万円になったとします。
損失 100万円×10%=10万円
資金 100万円?10万円=90万円
資金を100万円に戻すには、10%の損失なので、10%の利益でいいのでしょうか。
ちょっと計算してみます。
利益 90万円×10%=9万円
資金 90万円+9万円=99万円
このように、10%の損失を出した後に、10%の利益を出しても、損失を埋めることはできません。
50%の損失を出した場合を見てみましょう。
50%の利益では元本をまったく回復できません。
このように、一度損失を出すと、それを回復するのが難しくなるのは、損失を出すたびに、投資のための資金が目減りするためです。
損失を出せば出すほど、資金は減って、資産は増やしにくくなります。
だから一度に大きな損失を出してはいけないのです。
退場せずに、成長し続けるための資金計画
それでは、市場から退場せずに成長し続けるための資金計画のポイントを挙げてみます。
1)毎月の損失許容額の設定
初心者が損失を出さず、利益を出し続けることは、ほぼ不可能でしょう。
それでも、FX取引で資産を増やせるようになるためには、取引を続け、経験を積み、自分の生活や資産状況にあった、自分の投資スタイルを見つけなければなりません。
そのために必要なのが資金計画です。
投資金が減ると、資産を増やしにくくなることは説明しました。
そのための対策は、まず1カ月間に出していい損失を決めることなのです。
あなたは、毎月いくらまでなら損失を出してもかまわないでしょうか。
毎月1万円ですか?それとも毎月3万円ですか?自分に問いかけてみてください。
「毎月◯◯円の損失までならなんとかなるかなぁ」
そう思ったその金額が、あなたの損失許容額です。
もし、その金額の損失を出してしまった場合は、ポジションを決済し、その月は取引をしないようにします。
毎月の損失許容額分の入金設定
次に、毎月損失許容額をFX口座に入金するように設定しましょう。
最近の銀行は毎月同じ金額を振り込めるような設定が可能です。
自分の毎月の損失許容額をFX口座に入金するように設定し、毎月の損失許容額を守るように取引をします。
例えば、投資金100万円を持っていて、ある月に損失許容額の1万円の損失を出してしまったとします。
その月は取引を終了して、なぜ1万円の損失を出してしまったのか、「振り返り」ましょう。
FXで損失を出し続ける人の多くは、損失を出した理由を分析せずに、「取引で取り返してやる」といったような冷静さを欠いた行動を取りやすいのです。
きちんと自己分析して改善策を立ててください。
損切りは難しい
FX初心者の中には、「この評価損失を決済したら、損失が確定してしまうが、決済せずに待てば、相場が回復して損失が小さくなるかもしれない。
むしろ、評価益が出て、利益が出せるかも」と、自分の都合のいいように相場を認識して、評価損失をさらに膨らませてしまう人がいます。
実は、このような心理は、FX初心者だけではなく、多くの投資家に当てはまることで、アメリカの行動経済学者、ダニエル・カーネマンの「プロスペクト理論」によって証明されています。
人は評価益に対しては比較的早く利益確定をし、評価損に対してはその損が小さくなる可能性にかけて、決済を遅らせることが、実験結果から判明しています。
評価損が自分の損失許容額に達したときは損切りしてください。
損切りできるようになるための工夫
それでも合理的に行動できないのが人間です。
「毎月◯◯円の損失を出したら決済する」という決意を、パソコンのディスプレイに貼り付けたり、この決意をスマートフォンのリマインダーに登録し、定期的に通知するようにしたりして、自分の考え方を改善させましょう。
また、発注後にどの程度の価格になったら、許容額分の損失になるか計算し、逆指値注文を出す習慣をつけましょう。
損失許容額分を毎月入金しても大丈夫?
毎月の損失許容額分を、毎月入金する設定を紹介すると、「本当に大丈夫なの?」と不安な反応を示す人が少なくありません。
どうやらパチンコやスロットマシンで、毎回、財布のお金をすべて使うのと同じようなイメージを持っていらっしゃるようです。
パチンコなどでは、手持ちの現金がなくなるまで遊ぶか、大きな利益を上げたらお店から出るような遊び方をされる人が多いようで、それと混同されるようなのですが、FX取引はあくまでも資産運用です。
損失許容額の損失を出したら、その月の取引は停止するという資金計画を正しく守れば、FX取引は現金をすべて失うギャンブルではなく、資産運用になるのです。
損切りすれば、入金の必要はない?
「毎月の損失許容額を守れば、損失は限定されるので、入金の必要はないのでは?」と思う人がいらっしゃいます。
しかし、すでにご説明した通り、1%の損失を出した場合、1%の利益では元本が回復しません。
1%以上の利益が必要になります。
入金しない場合の元本回復までの取引リスク
ただし、「1%以上の利益を求める」取引は、「1%以上の損失を被る」可能性がある点に注意してください。
2%、3%と損失を出したときも同様です。
元本回復のために、それ以上のリスク(変動率)を取らなければなりません。
経験が浅い段階で、大きなリスクを取るような取引をすると傷口を広げる可能性があります。
入金した場合の元本回復までの取引リスク
それでは、毎月の損失許容額を入金した場合、どうなるでしょうか。
図のように、損失許容額分の1万円を入金すると、最初の取引と同じリスク(変動率)で、1万円の利益を得ることが可能性になるのです。
つまり、毎月の損失許容額分の入金をすると、取引のリスク(変動率)を増大させることなく、利益を出しやすくなるのです。
口座の現金が減ってしまうのでは?
毎月の損失許容額分の毎月入金する設定を紹介すると、 「現金口座の現金が減っていく気がする・・・」という人がいます。
しかし、FXは資産運用です。
現金口座だけでなく、FX口座とあわせて資産を考えるようにしましょう。
損切りをした時点で資産は目減りしています。
だから、現金口座からFX口座へ資金移動しても、全体の資産は減っていません。
毎月の損失許容金額は勉強代
続いて、損失許容額のルールを守り、12カ月間取引をしたとき、資産がどうなるのかを分かりやすい例で説明してみます。
元本100万円、変動率1%の取引で、毎月の損失許容額を1万円に設定し、12カ月連続で負け続けたケースと6カ月連続で負け続けた後に、1/3の勝率になったケースを比較してみましょう。
12カ月連続負け続けたケース
損失許容額分の損失を繰り返すので、年間の損失は12万円。
図のような損失と入金を繰り返した後の損益率は以下のようになります。
もし、毎月1万円の損失が苦しいのであれば、金額を変更してください。
もしくは、ムダな支出を減らしたり、収入を増やしたり、その他の収支を見直して、FXで資産運用していくための資金計画を作ってください。
6カ月連続負け続けて、1/3の勝率で勝てるようになったケース
ケース1と比較すると、累積損失が小さくなり、損益率が-7.13%に改善しています。
いずれのケースでも、利益を出すことはできませんでしたが、1年間相場から退場せずに取引をするという経験ができました。
これは大きな資産です。
確かに1年間、毎月の損失額分の資産を失いましたが、1年間の経験値が、あなたの資産として積み上がっているのです。
また、投資金も元本の100万円以上を確保できました。
この経験値で、投資家は成長するのです。
例えば、勝率はそのまま(1/3)で、利益率が2%取れるように成長したとします。
2年目の損益率は0.6%になります。
わずかながら資産は増えました。
1年目の累積損失が79,800円なので、2年間の収支では約7万円のマイナスですが、2年間、相場から退場せずに取引できたという資産が、さらに積み上がっています。
投資家として成長するための勉強代7万円が高いと思うか、安いと思うかは、あなた次第です。
FX市場から退場せず、成長し続けるために必要な資金管理の方法
最後にポイントをおさらいします。
・損失を出したら、元本回復が難しいことを認識
・毎月の損失許容額の設定
・損失許容額分をFX口座に毎月入金するように設定
・損失許容額を厳守するような工夫と努力
・取引ごとの振り返りによる結果分析
こうしたことの積み重ねが、個人投資家としてのあなたを毎年成長させるのです。
何よりも大切なことはFX市場から退場せずに、経験値を積み上げること。
これまでの自分の取引について、一度振り返ってみてはどうでしょうか。
株式会社タートルズ代表/テクニカルアナリスト
2004年、東京工業大学から一橋大学へ編入学。専門は数理経済学。卒業後、FX会社のシステムトレードプロジェクトのリーダーになり、プラットフォーム開発および自動売買プログラムの開発に従事。その後、金融系ベンチャーの立ち上げに参画。より多くの人に金融のことを知ってほしいと思い金融教育コンテンツの制作に集中するために会社を創業。現在は、ハイリスク・ハイリターンの投資手法ではなく、初心者でも長く続けられるリスクを抑えた投資手法を研究中。