南アフリカランドは9月末から対ドルで反落
南アフリカ・ランドの対ドル相場は、グローバルな為替市場におけるリスクセンチメント、そしてそれを大局的に反映して変動する安全通貨であるドルの名目実効為替レートと基本的に連動性が高い(第1図)。
第1図:南アフリカ・ランド対ドル相場とドル名目実効為替レート
ドルは9月後半頃から米経済が予想以上に底堅いとの見方や、米大統領選でトランプ氏が優勢になりつつあるとの見方から反発に転じていた。その後11月5日の米大統領選でトランプ氏の再選が確定し、米議会上下両院も共和党が過半数を獲得するというトリプル・レッドとなることも判明すると、ドルはさらに反発を強めた。11月半ば以降、そうした流れが一旦一服するかにみえていたところ、ロシアとウクライナの戦闘激化を受けた地政学リスクの高まりから、安全資産・通貨としてのドルが再び強含む動きとなっている。ランドは、5月の統一政府(GNU)誕生以来、改革進展期待から堅調な推移がみられて来たが、こうしたドル高への揺り戻しを受けて、9月末から対ドルで反落に転じて来た。
南アフリカランドの見通し
統一政府内では、最近ロシアのウクライナ侵攻に対する見解で意見対立が表面化するなど、先行き不透明感も浮上しつつあるが、11月15日には格付会社S&Pが、統一政府による改革加速や投資回復を受けて、南アフリカの格付け(BB-)見通しを安定的からポジティブに変更した。大規模計画停電の見送りも続く中、緩やかな景気拡大は続いている。インフレ率の沈静化傾向から、11月21日に南アフリカ準備銀行(SARB)が9月に続いて0.25%の利下げを実施したことも、景気支援要因となり得よう(第2図)。
第2図:南アフリカ政策金利とCPI上昇率(前年比)
もっとも、高金利通貨であるランドはボラタイルに動き易く、ここ1ヵ月程度のドル高局面では主要な通貨の中でも一転比較的大きく下落している。今後も南アフリカ国内の政治・経済情勢と共に、第二次トランプ政権による様々な政策の方針転換が、世界の政治・経済情勢にどのような影響を与えるかがランドの行方にも大きく影響を与えよう。米国第一主義が先鋭化する場合、ランドにとっては相応の下落リスクとなろう。
南アフリカランド/円 週足チャート
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新興国通貨が高金利である理由について
新興国に分類される国々は概して政治リスクや財政リスクが先進国よりも高く、したがってその経済的信用度は相対的に低い水準にあります。こうした条件下では海外投資家の資金を呼び寄せられず、経済発展の支障となるため、金利を上げたり税金を安くしたりすることで、信用度の低さを補いうる投資環境を構築しようとします。そのため新興国通貨は一般に先進国通貨よりも高金利となる傾向にありますが、前述したように各種リスクが高い水準にあることから、長期的には先進国通貨に比べて価値が下がる(=通貨が下落する)条件を備えているともいえます。
橋本 将司(はしもと・まさし)氏
慶應義塾大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。国際通貨研究所研究員、グローバルマーケットリサーチ・シニアアナリスト、経済調査室ニューヨーク駐在などを歴任し、グローバルな為替市場やマクロ経済に加え、米国金融業界や金融規制など幅広い分野の調査業務に従事。現在国際通貨研究所において、為替市場や主要国の金融政策・マクロ経済動向の分析を担当。理論的な観点からの為替市場分析を得意とする。
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