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ランド相場に持ち直しの兆し
南アフリカ・ランドの対ドル相場は、グローバルな為替市場におけるリスクセンチメント、そしてそれを大局的に反映して変動する安全通貨であるドルの名目実効為替レートと連動性が高い(第1図)。
第1図:南アフリカ・ランド対ドル相場とドル名目実効為替レート
米経済の減速とインフレ率の頭打ち傾向が引き続きみられており、金融市場では次回1月31日~2月1日のFOMCでの利上げ幅が0.25%へとさらに縮小することが織り込まれつつある。12月後半に反発の兆しがみられた米金利も再び下落に転じ、昨年11月からのドルの下落と、ランドを含む新興国通貨などの持ち直しの流れが続いている。
中国でゼロコロナ政策が解除され、中国経済の持ち直しが世界経済の下支え要因になることへの期待から、市場が過度なリスク回避に陥っていないことも、こうした動きの背景となっている。
現状、南アフリカにおける景気減速の顕著な兆候はみられず(第2図)、緩やかなリスク選好の流れが維持される限り、ランドも持ち直し傾向が続き易いとみられる。
第2図:南アフリカ・実質小売売上高(前年比)
依然として電力問題がネック
一方、1月中旬からは、新興国通貨の上昇が一旦一服する傾向の中で、南アフリカの国営電力会社エスコムにかかる電力不足問題の深刻化が、ラマポーザ大統領の今年のダボス会議への出席見送りにも発展するなど、ランド固有の嫌気材料もあり、ランドはやや大きく反落した。目先はこうした国内の混乱の影響に留意する必要があろう。
先行きも、主要国においてこれまでの急速な利上げの影響が本格化して来る中で、市場のリスクセンチメントの変化により、ドル高・ランド安の流れが再開するリスクも依然警戒しておく必要があるとみている。
(国際通貨研究所 上席研究員 橋本 将司 氏)
【南アフリカランド/円 日足】
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新興国通貨が高金利である理由について
新興国に分類される国々は概して政治リスクや財政リスクが先進国よりも高く、したがってその経済的信用度は相対的に低い水準にあります。こうした条件下では海外投資家の資金を呼び寄せられず、経済発展の支障となるため、金利を上げたり税金を安くしたりすることで、信用度の低さを補いうる投資環境を構築しようとします。そのため新興国通貨は一般に先進国通貨よりも高金利となる傾向にありますが、前述したように各種リスクが高い水準にあることから、長期的には先進国通貨に比べて価値が下がる(=通貨が下落する)条件を備えているともいえます。
橋本 将司(はしもと・まさし)氏
慶應義塾大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。国際通貨研究所研究員、グローバルマーケットリサーチ・シニアアナリスト、経済調査室ニューヨーク駐在などを歴任し、グローバルな為替市場やマクロ経済に加え、米国金融業界や金融規制など幅広い分野の調査業務に従事。現在国際通貨研究所において、為替市場や主要国の金融政策・マクロ経済動向の分析を担当。理論的な観点からの為替市場分析を得意とする。
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