総括
FX「もはや円安ではない。介入と利上げで7-9月は日本停滞」
ドル円=148-153、ユーロ円=156-161、ユーロドル=1.03-1.08
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨7位(9位)、株価7位(7位)、もはや円安ではない。介入と利上げで7-9月は日本停滞」
(もはや円安ではない)
円が回復している。年間では7位、首位ランドとの差は8.05%、ドルとの差は6.4%。最下位メキシコとの差は10.48%。日銀総裁は円安を利上げの材料としているが円安というレベルの話ではなくなっている。この円相場で利上げや介入を行うとどなるかは7-9月の景気や株価がよく表している。
(7-9月の日本の状況、7月の利上げと介入後)
日本経済がデフレ不況から立ち直ったとは言えないが、小反発しているのは円安が大きく影響しているが、今年はその円安が政府日銀に総攻撃にあっている。ただ弊害が大きい。日経平均は7月の高値の4万2千円が遠くなり、米国市場に大きく後れを取っている。GPIFの7-9月期の運用利回りはマイナス3.57%、9.1兆円の赤字となった。他の機関投資家や個人の運用も同様だろう。
7-9月期の法人企業統計の全産業の経常利益は前年同期に比べて3.3%減少(23.1兆円)で7四半期ぶりのマイナスとなった。
OECDは2024年の日本の成長率をマイナス0.3%と前回のマイナス0.2%から下方修正した。
まるでバブルをつぶそうかのように大規模円買い介入や利上げを行ったり、行おうとしているが、現状はバブルには程遠い。利上げと介入には悪い結果がついてくるだろう。
(10-12月期法人企業景気予測調査と日銀短観が今週発表)
今週は10-12月期法人企業景気予測調査と日銀短観が発表される。ほぼ同内容の調査であるので、企業も同じことを2回回答する。一つにまとめて経費削減したらどうだろう。
(閉店、倒産で利上げは昔もあって失敗した)
イトーヨーカドーや高島屋の一部閉店、船井電機の破たんなどの報道があった。前回触れた、2000年8月の速水総裁のそごう破たん時の利上げを思い出した。到底、経済は耐えられず日銀は6か月後、利下げに転じた。
(11月はデータ通り円高、12月は)
11月はトランプトレードでドル高と言われながらデータ通り円が最強となった。12月も小幅だが円高傾向が強いが、第1週は一目の雲に阻まれている。ボリバン下限でドル円が自律反発していることもある。
原油安で輸入総額が減りそうだが、まだ貿易収支は赤字のままだ。またGPIFなどの年金投資家もコンスタントに入ってくる保険料を海外投資する。引き続き、貿易統計、外貨投信残高にも気をつけながら取引したい。センチメントが傾いてもチャートの位置で売り過ぎ買いすぎも注視したい。
*米ドル「通貨3位(2位)、株価(NYダウ)6位(5位)、今週はCPI。米経済は好調=パウエル議長」
(ドルは安定、株価は強い)
ドルは年間でポンドに抜かれ3位に後退している。ただ今年の主要通貨は安定しており、G7やG20で為替は話題にならない。米10年国債利回りは12月に入り4.1-2%で安定。株価は3市場とも強く、ナスダックが年初来32.3%高、S&Pが27.68%高、NYダウが18.45%高。
(パウエル議長、慎重なる利下げか)
パウエル議長は先週、米経済が従来の見通しよりも好調に推移しているとの見方を示し、景気の下支えにつながる追加利下げのペースを慎重に判断するとの考えを示唆した。パウエル議長は、足元の米経済は9月時点の予想を上回るとし「労働市場は予想したよりも確実に強く、インフレも少し上昇している」と述べた。FRBは、現在の政策金利は景気にブレーキがかかる高水準にあるとみている。時間をかけて、景気を刺激も抑制もしない水準まで利下げをする方針だが、足元の経済が好調なため、その水準を探る際に「より慎重になる余裕がある」とも述べた。
フェドウオッチによると、17-18日の会合で0.25%の利下げ確率は89%。前日は70%。
(今週は11月消費者物価でFOMCを占う)
今週の11月消費者物価の予想は前年比で2.7%、コアは3.3%、10月はそれぞれ2.6%、3.3%。CPIナウ11月もは2.7%、3.3%。GDPナウは3.3%と強い。サプライチェーンインデックスはマイナス0.32と落ち着いている。
(関税問題は)
メキシコ、カナダへ25%関税、中国に追加関税を打ち出したトランプ氏だが、その引き上げ理由は「麻薬と不法移民」。早速、メキシコは「麻薬と不法移民」対策で動き出している。それが改善すれば関税案は取り消されるれるのだろうか。日本がトランプ氏のように関税引き上げを打ち上げれば自滅するが、米国はどう対応するのか見どころである。
*ユーロ「通貨6位(5位)、株価5位(6位)DAX)、年間7位の円が迫ってきた年間6位のユーロ、景気減速、独仏政局、トランプ関税」
(円に迫られてきたユーロ)
11月のユーロは月間最弱。12月は少し持ち直し6位スタート。今年は弱かったが11月浮上した7位の円に迫られている。ユーロは年間6位。ユーロ圏の脆弱な経済状況やフランスの政局は変わっていないが、ユーロドルがボリンジャー下限まで下落したことから自律反発。株価(独DAX)指数は年初来21.69%高と日経平均の16.81%高をしのぐ。独10年国債利回りは2.1%と前週の2.08%から若干上昇。
(ECBは0.25%利下げか。景気減速と独仏の政局から)
今週はECB理事会。エコノミスト75人中73人は、預金金利を0.25%引き下げ3.0%にすると予想しており、2人は0.5%の引き下げを予想している(ロイター)。
成長・インフレ予測は下方修正されると見込まれ、政策金利が2025年末までに景気刺激的な領域に入ると予想している。ユーロ圏経済の状況悪化を反映している。長らく低迷している製造業に続いてサービス業が縮小し、企業と消費者の両方に不透明感がまん延している。
また政治的混乱により、ドイツとフランスでは安定した政府が不在。ウクライナと中東では戦争が続いており、トランプ次期米大統領は貿易関税をちらつかせている。
全体として悲観的なムードから、ECBが0.5%の利下げを行うのではないかという臆測も浮上している。
(ドイツ経済指標、引き続き弱い)
10月のドイツ鉱工業生産指数は前月比1.0%低下と、予想外に低下した。エネルギー産業や自動車産業の生産が落ち込んだ。予想は1.2%上昇だった。また10月の鉱工業受注指数は前月1.5%低下した。内需の低迷が背景。予想は2.0%低下だった。
(フランス政局)
フランスのマクロン大統領は12月5日、議会で不信任決議案が可決されたバルニエ首相の後任を「数日中に」指名すると表明した。新首相の最優先課題は、2025年予算案の議会承認になるとした。
極右政党「国民連合(RN)」を率いるマリーヌ・ルペン氏は数週間以内に予算案が可決される可能性があると発言した。フランス株価指数(CAC40)は年初来1.54%安。
*ポンド「通貨2位(3位)、株価15位(15位)、OECDが来年の成長見通し引き上げで強い」
(ポンドは単独2位へ浮上)
ポンドはドルと同率2位から先週は単独2位へ浮上した。10年国債利回りは4.28%と米国よりやや高い。株価には勢いなく年初来7.44%高。
(OECDが来年の成長見通しを前回の1.2%から1.7%に引き上げ)
0ECDは来年の英経済成長率予想を上方修正した。政府支出の急拡大を理由に挙げた。ただ、インフレ率も押し上げられ、G7で最高水準になる可能性があるとの見方も示した。
今年の経済成長率予測しを従来の1.1%から0.9%に引き下げる一方で、25年の見通しを前回の1.2%から1.7%に引き上げた。 新型コロナのパンデミック時の急激な変動を除けば、2017以来の高成長となる。OECDは来年英国よりも速い成長が見込まれるのはカナダと米国のみと予測している。
財政緩和の前倒しにより、政府支出と投資が25年の成長を押し上げるが、その後は増税が個人消費の重荷となり、政府の追加借り入れが企業投資を圧迫するとの見方を示した。
また25年のインフレ率が平均2.7%となり、G7諸国の中で最も高水準になると予想した。他国と比べて賃金の伸びが堅調なことやサービス価格が上昇していることを理由に、「国内の物価圧力は依然として残っている」と分析した。
(ベイリー中銀総裁、段階的に利下げ)
ベイリー中銀総裁はインフレ率低下のプロセスは定着していると述べ、今後1年で段階的に利下げする可能性が高いとの見解を改めて表明した。
「インフレ率は夏に目標まで下がったが、再び目標を少し上回る水準に戻る公算が大きいと述べてきたため、まだ道のりは残されている」と語った。英中銀は来年4回の利下げを予想している、市場がすでに4回の利下げを織り込んでおり、それを中銀が最新の経済予測に反映させたと説明した。
(ベイリー総裁、トランプ関税は)
米国の次期トランプ政権が保護主義政策を強め、関税を引き上げた場合のインフレへの影響を予測することは「まったく簡単ではない」と指摘した。
こうした通商政策により貿易価格は動くが、他国の反応や為替レートの反応に左右されるため、インフレへの影響を予測するのは「決して容易ではない」と述べた。
*豪ドル「通貨8位(6位)、株価13位(10位)、豪ドル円に抜かれる。GDP減速も金利は据え置きか」
(豪ドルが円に抜かれる)
豪ドルは年間で円に抜かれ8位へ後退した。10年国債利回りは前週の4.32%から4.23%へ低下。全株指数は先週は小幅下げて年初来10.98%高。
(GDPが予想を下回る)
豪の3QのGDPは前期比0.3%増と、予想の0.4%増を下回った。政府が国防やインフラへの支出を拡大した一方、個人消費や企業の支出は軟調だった。 前年比の伸びは0.8%で、前期の1.0%から鈍化。予想は1.1%。コロナ禍に見舞われた2020年終盤以来の低成長となった。
RBAは、減税が所得に反映されるとともに、消費者の間で追加利上げはないとの確信が強まる中、今年末までに経済成長率が1.5%に加速するとみていたが、GDPが予想を下回ったことを受け、この見通しは不透明となった。 弱いGDPは利下げを早めるだろう。
チャーマーズ財務相は、GDP成長率は弱く、過去の平均を下回っていると指摘。「豪経済は成長しているが、ペースは非常に遅い。金利や生活費の上昇圧力、世界経済の不確実性も重しとなっている」と分析した。
(今週は政策金利決定、GDP減速は据え置き予想に影響しないが豪ドルは下がり始めた)
GDP減速の発表以前は、市場は今週政策金利を現在の4.35%から引き下げる可能性はほとんどないとみていた。GDPは予想を下回ったが、RBAがデータを短期的な利下げの兆候とはとらえないだろとの声も多い。RBAは依然として、経済の基調インフレが高すぎることを懸念しており、それが持続的に低下していくとは確信していない。「成長の弱さは金利引き下げの必要性を浮き彫りにしているが、インフレが依然として不快なほど高いことから、金利引き下げを実施するのは困難だ」とされている。来年5月の利下げ観測が4月に、前倒しされた程度だが今後、国民から利下げの催促が出てくるだろう。
(経常赤字拡大)
3Q経常収支は、141億豪ドルの赤字となり、赤字幅は予想の100億豪ドルよりも大きくなった。 貿易黒字額が資源価格の下落により2018年半ば以降で最小となった。
*NZドル「通貨10位(10位)、株価14位(11位)、2月も利下げ予想」
(NZドルは下位低迷)
引き続き年初来10位と弱い。12月も11位スタート。対円で年初来1.83%安と弱かった円に逆転されている。10年国債利回りは4.48%と先進国では高い。NZ株価指数(NZ50)は年初来8.835と19市場中で14位。
(景気低迷と失業率上昇への懸念が住宅価格を抑える)
住宅価格は11月に9カ月連続で下落した。景気低迷と失業率上昇への懸念が金利低下の影響を上回ったためだ。不動産価格が10月より0.4%下落した。前年比では3.5%下落し、前月の前年比2.2%下落に比べて低下した。中銀が2回連続で0.5%の利下げを実施し、2月の次回会合で3回目の利下げを実施する可能性を示唆した。これにより購入者の借入コストは低下するが、景気低迷のなか不動産価格の上昇にはつながらなかった。中銀は、2024年2Qと3Qに経済が景気後退に陥り、今後6か月間で回復は緩やかになると予測した。失業率は現在の4.8%から2025年半ばまでに5.2%に上昇すると予想している。
(輸出減少もNZドル売りへ)
ニュージーランドの輸出量は2四半期連続で減少し、年半ばの景気後退の兆候が強まった。3Qの輸出が前四半期比1.8%減少したと発表した。輸入は3%増加した。乳製品と林業製品の出荷量は増加したにもかかわらず、肉類と羊毛の出荷量は四半期で減少した。輸入量の増加は燃料と鉄鋼購入の急増が牽引した。
また3Qの小売売上高は前年比2.5%減少した。
(ラクソン首相、ウィリス財務相は利下げを歓迎」
ラクソン首相は、政策金利引き下げを称賛し、NZは正しい方向に向かっていると述べた。「住宅所有者向け住宅ローンや企業向け融資など、借入コストの削減を意味する。インフレ率は鈍化し、目標の1~3%の範囲内にあるが、経済成長率は依然として低く、予測は引き続き縮小している」とした。
ウィリス財務相は、利下げは良いニュースだが、まだ長い道のりが残っていると語った。「政府が財政支出の優先順位を慎重に決め、最前線のサービスに投資し、官僚主義を減らし、経済への信頼を回復するために講じた措置は効果を上げている。我々は正しい方向に向かっている」、「政府の黒字達成見通しに影響するかどうかについては、来月の半期経済財政報告で明らかにする」とした。
テクニカル分析
*ドル円「雲の上限に沿って動く、5日線上向く」
日足、ボリバン下限から小反発、雲の上限に沿って動いている。12月3日-6日の上昇ラインがサポート。12月4日-6日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向く、20日線下向き。
週足、11月18日週の行き詰まり線をきっかけに雲の中に急落。先週は小動き。ボリバン上位は維持。9月30日週-12月2日週の上昇ラインがサポート。11月25日週-12月2日週の下降ラインが上値抵抗。5週線下向く、20週線下向き。
月足、11月はカブセ線、上ヒゲ長い。ただ先週は下がらず。ボリバン中位。5か月線が20か月線を下抜く。10月-11月の上昇ラインを下抜く。9月-10月の上昇ラインがサポート。7月-11月の下降ラインが上値抵抗。
年足、3年連続陽線。今年は介入で一時陰転するも再び陽転。ただここ3年は上ヒゲが長い=介入=ので3σ上限近くから下落。22年-23年の上昇ラインがサポート。1985年-2023年の下降ラインを上抜く。
*ユーロドル「ボリバン下限から反発し中位上抜くも2σ上限も近い」
日足、ボリバン2σ下限から反発し中位を上抜く。12月5日-6日の上昇ラインがサポート。11月6日-12月6日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向く、20日線下向き。
週足、2週連続陽線。ボリバン3σ下限から反発。雲下。11月18日週-12月2日週の上昇ラインがサポート。11月4日週-12月2日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線下向き。
月足、10月、11月は連続陰線で雲の下げ下落、ただボリバン3σ下限から反発。22年9月-24年11月の上昇ラインがサポート。24年10月-11月の下降ラインが上値抵抗。5か月、20か月線下向き。
年足、24年は再び陰転。22年-23年の上昇ラインを下抜く。14年‐21年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロ円「5週ぶり週足陽線、日足は2σ下限から反発」
日足、2σ下限から反発。雲下。12月5日-6日の上昇ラインがサポート。11月20日-12月6日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向く、20日線下向き。
週足、5週ぶり陽線、雲下。ボリバン2σ下限から反発。9月16日週-12月2日週の上昇ラインがサポート。11月25日週-12月2日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線下向き。
月足、ボリバン中位割る。9月-11月の上昇ラインを下抜くが8月-9月の上昇ラインがサポート。7月-11月の下降ラインが上値抵抗。5か月線下向き、20か月線上向き。
年足、4年連続陽線。24年も上ヒゲがかなり長くなったがここまでかろうじて陽線。22年-23年の上昇ラインがサポート。08年-23年の下降ラインを一時上抜く。
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