メキシコの金融政策
11月14日に政策金利を予想通り0.25%引き下げて10.25%とした。メキシコ中銀は3月に利下げを開始、5,6月は据え置いて8、9,11月と3会合連続の利下げとなった。決定は全会一致となり9月会合で据え置きを主張したヒース副総裁も利下げを主張。
声明文では米大統領選の影響でペソは大きく下落し、ボラティリティは高まった。しかし金融市場は秩序だった動きを示しているとし、現状の為替レベルに対しては許容する姿勢と受け止められる。
さらに、インフレに関しても2025年10~12月期にインフレの目標に達するという見方を維持した。しかしインフレ見通しに関するリスクのバランスは依然として上向いていると警戒感は示している。これはペソが現状のレベルであればまだ問題はないが、大きくペソ安になる場合のリスクを考慮しているものと思われる。そうであればペソが大きく下落する局面ではメキシコ中銀は利下げを停止する可能性はあるものと思われる。
10月のCPIは前月比4.76%と9月の4.58%からやや上昇した。一方でコアCPIは3.8%と9月の3.91%から低下し2か月連続で中銀のインフレターゲットである3±1%を下回っている。
声明文は国内経済については過去3四半期に比べると7~9月期は高い成長を達成したと言及している。ただ経済成長に関するリスクのバランスは依然下振れ方向に傾いているとし、先行きに関しては楽観的には見ていない模様だ。
10月31日に発表された7~9月期のGDPは4.1%となり4~6月期の0.6%から成長が加速した。
声明文で金融政策に関してはインフレの状況は更なる金利の調整を許容するであろうと9月の文言を継続し金融緩和を継続することを示した。成長率が今後減速する可能性がある中で利下げは合理的になる。
ただトランプ政権の政策次第ではペソの下落が加速する可能性があり、その場合は利下げの速度を調整する可能性があり、0.25%ずつの慎重な利下げ継続を予想する。
格付けの影響
11月14日に格付け会社のムーディーズは格付けをBaa2に据え置いたが、見通しを安定的からネガティブに引き下げた。変更の理由として、財政赤字が急拡大したこと、司法制度改革が民主主義にとって後ろ向きな改革と思われること、国営石油会社ぺメックスの債務が政府の財政に悪影響を及ぼす可能性があることなどをあげた。
ネガティブになると今後格下げの可能性が出てくるが、仮に1段階格下げされても投資適格水準なので格下げ自体はあまり問題にならないだろう。
メキシコペソの投資戦略
ドルペソは11月に入り26日時点で19.76~20.79のレンジで推移している。トランプ氏が当選した11月6日に20.79まで上昇。またカナダ、メキシコに25%の関税をかけると発言した11月26日には20.75まで上昇している。メキシコ政府の司法改革に対する懸念、トランプリスクなどペソ売りの材料で20ぺソ付近がサポートされている。メキシコにとって悪材料があるものの20.80ペソもレジスタンスになっており、ここが抜けなければ20~20.80ペソのレンジを予想する。
同じくペソ円の11月のレンジは7.398~7.768円のレンジで推移している。11月6日に一時7.768円の安値まで下落したが小幅のレンジが続いている。一目均衡表の雲、転換線、基準線も7.5~7.6円に収束してきており狭いレンジが続きそうに思われる。仮に7.398~7.768円のレンジをブレイクしても7.2~7.8円が次のサポート、レジスタンスとして意識される。
メキシコペソ/円 週足チャート
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新興国通貨が高金利である理由について
新興国に分類される国々は概して政治リスクや財政リスクが先進国よりも高く、したがってその経済的信用度は相対的に低い水準にあります。こうした条件下では海外投資家の資金を呼び寄せられず、経済発展の支障となるため、金利を上げたり税金を安くしたりすることで、信用度の低さを補いうる投資環境を構築しようとします。そのため新興国通貨は一般に先進国通貨よりも高金利となる傾向にありますが、前述したように各種リスクが高い水準にあることから、長期的には先進国通貨に比べて価値が下がる(=通貨が下落する)条件を備えているともいえます。
株式会社ADVANCE代表取締役 米系のシティバンク、英系のスタンダード・チャータード銀行で、20年以上にわたり、為替ディーラーとして活躍。現在は投資情報配信を主業務とする株式会社ADVANCE代表取締役。ドル、ユーロなどメジャー通貨のみならず、アジア通貨をはじめとするエマージング通貨でのディーリングについても造詣が深い。また、海外のトレーダー、ファンド関係者との親交も深い。ブログ「YEN蔵のFX投資術」、メルマガ「YEN蔵の市場便り」で個人投資家に対して為替に関する情報を発信しており、人気を博している。
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